校長先生の小窓を開けると

ごあいさつ

このページは、将来、東京動物専門学校の受験を考えている高校生諸君や保護者の方、また、動物園や水族館、観光牧場などの動物関係施設で、働いてみたいと思っているみなさんを想定し書いています。
私の、これまでの動物園勤務などの経験を通して感じたこと、指導いただいた諸先輩のこと、世界の動物園と日本の動物園の違いなど、あれこれ、書いてみようと思っています。

自己紹介

生まれは、北海道札幌市中央区、北海道大学獣医学部卒の獣医師です、卒業後は神奈川県などで、狂犬病予防員やと畜検査員を数年経験。その後、故郷の札幌市役所にUターン、その間、保健所、動物管理センターなどを経て、円山動物園長を最後に退職、動物園勤務は14年間。退職後は社団法人日本動物園水族館協会(以後、略称の日動水とする)で専務理事として数年間勤務し、平成24年4月から東京動物専門学校長として現在に至る。
ごあいさつ

このページは、将来、東京動物専門学校の受験を考えている高校生諸君や保護者の方、また、動物園や水族館、観光牧場などの動物関係施設で、働いてみたいと思っているみなさんを想定し書いています。
私の、これまでの動物園勤務などの経験を通して感じたこと、指導いただいた諸先輩のこと、世界の動物園と日本の動物園の違いなど、あれこれ、書いてみようと思っています。

自己紹介
生まれは、北海道札幌市中央区、北海道大学獣医学部卒の獣医師です、卒業後は神奈川県などで、狂犬病予防員やと畜検査員を数年経験。その後、故郷の札幌市役所にUターン、その間、保健所、動物管理センターなどを経て、円山動物園長を最後に退職、動物園勤務は14年間。退職後は社団法人日本動物園水族館協会(以後、略称の日動水とする)で専務理事として数年間勤務し、平成24年4月から東京動物専門学校長として現在に至る。
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第11回
卒業生に聞いてみました オホーツクとっかりセンターアザラシランド 中澤さん

718


(写真1)中澤さんと私


(写真2)中澤さんの仕事場で

オホーツクとっかりセンターアザラシランド(オホーツクガリンコタワー株式会社)
中澤 蒼さん(24期生)
(24期生は、平成24年4月入学、平成26年3月卒業)

オホーツクとっかりセンターアザラシランドは、北海道紋別市にある市営のアザラシ保護施設です。「とっかり」とはアザラシを意味するアイヌ語「トゥカラ」に由来する北海道方言。とっかりセンターでは、1987(昭和62)年の4頭から始まり、現在は2種類(ゴマフアザラシ、ワモンアザラシ)、20頭を超えるアザラシを飼育しています。
また、同センターは、アザラシを観察・観賞・体験してもらう展示施設の機能と、怪我をしたりや網にからまったりして保護されたアザラシを治療し、自然の海へ返す保護センターの機能を担っています。指定管理者はオホーツクガリンコタワー株式会社です。

北 村

こんにちは、お元気でしたか?

中 澤

お久しぶりです。遠くまでいらしていただいき、ありがとうございます。

北 村

まず、とっかりセンターの概要と中澤さんのご担当を教えてください。

中 澤

オホーツクとっかりセンターには、アザラシシーパラダイス(自然環境一体型展示施設)とアザラシランド(アザラシ保護飼育施設)との2施設があり、私はアザラシランドの担当です。


(写真3)とっかりセンターの場所と外観


(写真3)とっかりセンターの場所と外観

北 村

中澤さんは北海道出身ですから、真冬の寒さは大丈夫なのでしょうか?

中 澤

いえ、私は内陸にある士別市出身なので、海風の冷たさにはこたえます。

北 村

では後輩のために、いろいろとお聞かせください。東京動物専門学校を選ばれたのはどうしてですか?

中 澤

幼い頃から飼育員を目指していましたが、どんな分野に進むかまでは決めていませんでした。東京動物専門学校なら、数多くの動物たちと関わり、さまざまな分野のことを学びながら自分の進みたい道を探せると思い、受験を決めました。

北 村

実際に入学してみていかがでしたか?

中 澤

入学後は、水族館に就職することを目指すようになりました。ショーに憧れてからは、人前で話すことに力を入れ、学校祭では、アシカショーやヤギ・羊のふれあいを担当しました。実習では、カリフォルニアアシカやゴマフアザラシの馴致調教やショーもやらせていただき、自信にもつながりました。

北 村

学校の授業で学んだことは、今の仕事に役だっていますか?

中 澤

動物たちと関わりながら行う実習や、人前で話す練習など、実際の現場に限りなく近いことを実践し学んだことは、職場でも役に立っています。また、普段の学校生活でご指導いただいたことは、社会人のマナーとして大切なことだったと実感しています。

北 村

中澤さんは、2年生の施設研修先も、とっかりセンターでしたね。

中 澤

アザラシの保護施設という面に関心を持ち、希望しました。研修では、保護施設としての役割のほかに、観光施設としての役割についても学び、その二面性に魅力を感じ、ここで働きたいと思うようになりました。

北 村

施設研修が、就職のきっかけになったのですね。

中 澤

研修の時から「ここで働きたいです」と職員の方々にお伝えしていました。数ヶ月後、そのことを覚えていてくださった担当者の方が「一緒に働きませんか?」とお声をかけてくださり、校長先生をはじめ学校職員の方々のお力添えもあり、研修から1年後に内定をいただくことができました。

北 村

不断の努力が、就職に結びついたのですね。ところで、東京農業大学オホーツク校の学生さんも、とっかりセンターで実習すると聞いています。

中 澤

毎年、1年生が施設見学にいらっしゃいます。また、2週間ほどの実習に来る学生さんもいます。

北 村

農大生と東京動物専門学校生との違いを感じることはありますか?

中 澤

個人差はあると思いますが、専門的知識に関しては農大生のほうが豊富、現場での実践力に関しては東京動物専門学校のほうが慣れているように感じます。

北 村

そのような傾向があることは、時折耳にします。では、今のお仕事についてお聞かせください。

中 澤

現在、とっかりセンターには、アザラシランドに25頭、アザラシシーパラダイスに2頭、計27頭のアザラシがいます。センターでは、アザラシたちの保護飼育のほかに、給餌解説やイベントなどのお客様対応も行っています。保護したアザラシたちが元気になっていく姿を見るのはとても喜ばしいことです。また、今年は、とっかりセンターで初めてワモンアザラシの赤ちゃんも産まれました。成長していく姿は保護個体とは別の嬉しさを感じます。元気なアザラシたちを多くのお客様に見ていただけるよう日々努力しています。

初めて生まれたワモンアザラシのこども
(写真4)初めて生まれたワモンアザラシのこども

初めて生まれたワモンアザラシのこども
(写真5)初めて生まれたワモンアザラシのこども

北 村

ここ数年、保護個体は減少しているようですが、すべて放流しているのですか?

中 澤

毎年4月から5月に、アザラシの新生仔が保護されます。頭数は一定ではありませんが、多い年には10頭ほど保護されることもありました。しかし、保護頭数はだんだんと減っており、流氷の減少がアザラシたちにも影響しているのかもしれません。

北 村

温暖化の影響もあるのかもしれませんね。では最後に、後輩へのアドバイスをいただけますか?

中 澤

学校のルールを通して、社会人としてのマナーを身につけておくといいと思います。学生生活で当たり前のようにしてきた行動が、社会にでたとき思わぬ良い評価につながることもあります。そうした評価から得られる信頼はとても大切です。また、人前で話す練習は積極的に行ってみてください。実際の現場では、お客様との会話やイベントでの解説など、人前で話なければいけない場面がたくさんあります。学生のうちに慣れておけば、現場に出てからも役に立つと思います。最後に、わからないことは必ずその場で解決するようにしてください。質問することは、緊張したり、恥ずかしいと感じたりするかもしれませんが、わからないままにしておくと、あとになってもっと苦労します。勇気をもって質問しましょう。皆さん、頑張ってください。

北 村

ありがとうございます。中澤さんは、わが校の卒業生の中で、最北の職場で働いていることになりますね。真冬は猛烈な寒さ、その上、海獣を担当していらっしゃるのですから、体には十分気をつけてください、今年、施設研修先にとっかりセンターを希望している2年生がいますので、よろしくお願いいたします。

※追記1
冨里飼育場の人気者、ゴマフアザラシのモンとベツは、20数年前に、とっかりセンターから冨里にやってきた。実は、一昨年、とっかりセンターに相談のうえ、紋別市長あてに「20数年前にトッカリセンターからお預かりしたアザラシのモンとベツは、今でも元気です。ただ、高齢になり、特にベツは目が白濁してきています。もし放流困難個体がいましたら、私どもで教育用に飼育したいので、よろしくお願いします」との依頼を文書で提出しました。しかし、保護個体が減少してきているとのことで、実現はかなり難しいようです。

モンとベツ
(写真5)モンとベツ

モンとベツ
(写真5)モンとベツ

※追記2
とっかりセンター(オホーツクガリンコタワー株式会社)は、2018年3月、公益財団法人日本動物愛護協会主催の第10回日本動物大賞(社会貢献部門)を受賞しました。30年間に187頭のアザラシらを保護、元気になった個体を放流し、その実態を80本以上の論文や報告書にまとめ、発表した功績が高く評価されました。

授賞式プログラム
(写真6)授賞式プログラム

授賞式の様子
(写真7)授賞式の様子

受賞理由
(写真8)受賞理由

受賞理由
(写真8)受賞理由

第11回 おわり
第10回
卒業生に聞いてみました 下田海中水族館 米良さん

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(元)下田海中水族館 イルカトレーナー 米良 由希さん(18期生)
(18期生は、平成18年4月入学、平成20年3月卒業)

北 村

 米良さんは、本校を卒業後、10年間、下田海中水族館でイルカのトレーナーとして活躍していました。昨春、同水族館を退職し、現在は本校事務局の教職員を務めてくださっています。イルカトレーナーを目指している皆さんに、仕事の内容についてお話しいただきましょう。10年間の水族館での勤務はいかがでしたか?

米良

 いろいろな経験をさせていただき、たくさんのことを学びました。人としても成長させていただいた日々でした。振り返ってみると、ただただ全力で走り抜け、本当にアッというまの10年間でした。

北 村

 本校のことはどこでお知りになりましたか?

米良

 県立国分高等学校3年生のときのガイダンスで、この学校を知りました。たくさんの動物がいる冨里キャンパスの実習施設と授業のカリキュラムに惹かれ、受験を決めました。

北 村

 冨里キャンパスでは、海獣類の調教をしていたのですか?

米良

 はい、主に、カリホルニアアシカの「アクア」やゴマフアザラシの「ベツ」の調教を行い、時々ペリカンの給餌もしていました。。

北 村

 卒業時に川原学園賞や精勤賞を受けていらっしゃいますね。かなりまじめな学生だったのですね?


(写真1)八千代校舎の学生ホール前に、掲載されている燦然と輝く表彰者名


(写真1)八千代校舎の学生ホール前に、掲載されている燦然と輝く表彰者名

米良

 小さい頃から水族館で働くのが夢で、東京動物専門学校のことは「水族館で働くための学校」と位置づけていましたので、ボランティアなど将来につながることは、率先して行いました。そうした点を評価していただけたのだと思います。


(写真2)卒業アルバム用に水族館就職希望者が集まりました。
「真面目」とおっしゃっていただきましたが、右上の「変顔」が私です。


(写真2)卒業アルバム用に水族館就職希望者が集まりました。
「真面目」とおっしゃっていただきましたが、右上の「変顔」が私です。



(写真3)同じく卒業アルバムから。焼却係ではありません。他の人たちがみな動物と一緒に撮っていたので、
何か違う写真にしたくなり、焼却炉にしてみました。変かな……。


(写真3)同じく卒業アルバムから。焼却係ではありません。他の人たちがみな動物と一緒に撮っていたので、
何か違う写真にしたくなり、焼却炉にしてみました。変かな……。

北 村

 2年生の時の施設研修先は、大分マリーンパレス水族館「うみたまご」でしたね。研修先はどうやって選んだのですか?

米良

 「うみたまご」のホームページや水族館関連の本などを読み、関心を持ちました。実際に行ってみたところ、広い館内や元気な雰囲気などが自分の希望する水族館のイメージでしたので、研修先に決めました。


(写真4)施設研修発表会で、最優秀賞を受賞(下中央)


(写真4)施設研修発表会で、最優秀賞を受賞(下中央)

北 村

 イルカショーのインストラクターになりたいと思ったのはいつからですか?

米良

 もともとはイルカのトレーナーになりたかったわけではありません。水族館飼育員になりたいと思っていました。


(写真5)米良さん(右上)と相性の良かったバンドウイルカのナライ。左は後輩の岡野さん(25期生)


(写真5)米良さん(右上)と相性の良かったバンドウイルカのナライ。左は後輩の岡野さん(25期生)

北 村

 では、トレーナー希望ではなく、飼育員希望だったわけですね。

米良

 下田海中水族館では、飼育員がショーに出ます。私は当初からショー担当となり、いろいろと理由があってショーのデビューはなんと入社1週間後でした。ただただ緊張していましたが、何とか大きなミスがなく終えられました。その1ヶ月後、今度は水中でイルカと一緒に演技をする水中種目にデビューしました。それからのちは、毎日、ショーをしながら修正するという感じでした。トレーニングをしてくれたのは上司の飼育課長です。入社したての頃は、「できている人=正解」なので、そのまねができるよう頑張りました。

北 村

 イルカはどうやってトレーニングするのですか?

米良

 イルカのトレーニングは、食べ物(エサ)をご褒美にして、無理に演技をさせることではありません。イルカが飛んだり跳ねたりするのは、ごく自然な行動です。そうした行動にある条件をつけて、再現させるのです。トレーニングの目的は、「イルカに運動の機会を与えること」「イルカの日々の暮らしに刺激を与えること」「健康管理・治療に対するイルカとトレーナーの負担の軽減」の3つと言われています。

北 村

 そうすると、トレーニングはイルカとトレーナーの相性、そしてイルカの頭の良し悪しも関係してきますね。

米良

 相性の良し悪しは多少あると思います。イルカにも、勘のいいイルカ、ショー向きのイルカ、ふれあい向きのイルカというような「個性」 があります。

北 村

 10年間で、イルカのショーに何か変化がありましたか?

米良

 ショー自体には大きな変化はありませんが、最近は、お客様が間近で動物と触れ合えることに力を入れる水族館が増えていると思います。飼育員とお客様が話す機会も少なくないので、飼育員のトーク力や知識が一層求められるようになりました。

北 村

 お客様を楽しませるための方法を考えたりするように言われるのですか?

米良

 ショーに限らず、集客につながる工夫は常に求められます。そのための発想力も大切です。

北 村

 イルカショーの内容は水族館によって違うのでしょうか。他の水族館のショーやイベントについて調査することはあるのですか?

米良

 時間がとれなくて、実際に他の水族館に見に行ける機会はなかなかありません。そのかわり、常にインターネットでニュースやHPを閲覧して確認しています。イルカのショーは、演技の組み合わせの違いはもちろんありますが、基本動作は同じです。アクアワールド茨城県大洗水族館は、イルカの背にアシカを乗せているので、少し違うかもしれませんね。


(写真6)イルカに乗ったカリホルニアアシカ(大洗水族館)


(写真6)イルカに乗ったカリホルニアアシカ(大洗水族館)

北 村

 他の水族館と交流や意見交換などをすることはあるのですか?

米良

 日本動物園水族館協会が主催する全国会議や中部地区会議に参加できたときには積極的に話をし、連絡先を交換していました。ときには会議で、東京動物専門学校の先輩や後輩に出会うこともありました。

北 村

 イルカ・インストラクターを10年続けられた理由は何でしょう?

米良

 やはり、動物が好きだったからですね。イルカを見たお客様が笑顔になる──その瞬間・その場所を提供できることが、すごく嬉しかったです。また、年数を重ねるにつれて増える「イルカについての蘊蓄」をお話しできることも楽しかったです。たいへんなことも多いのですが、やりがいのある仕事だと思います。

北 村

 その「イルカについての蘊蓄」を少し教えてください。

米良

 では2つご紹介しましょう。まず、イルカの睡眠です。最近、知られるようになってきましたが、イルカは「熟睡」しません。右の脳と左の脳を交互に休ませているからです。また、ほとんどのイルカは臭覚がありません。おそらく、海中では臭いを感じる必要がない環境によるものだと思われます。ヒゲクジラの一部には、多少臭いを感じる種がいるようですが……。

北 村

 イルカ・インストラクターを目指している人たちにアドバイスをお願いします。

米良

 学校の授業でわからないことがあるかもしれませんが、就職後に必要となるときがきます。授業中は、黒板に書かれたことだけでなく、講師の話したこともメモしておくといいと思います。それから、常に「なぜ?」と疑問を持つことが大事です。物事には必ず理由があるからです。一つ一つ解決していくことで、自分の肥やしになっていきます。また、友達だけでなく、いろいろな年代の方と話をすると、就職してからの接客に役立つと思います。そして、できるだけたくさんの水族館を見学してください。それぞれの水族館のコンセプトやセールスポイントントを知り、就職につなげてほしいと思います。皆さん、頑張ってください。

特別編 鴨川シーワールド、荒井一利総支配人に聞く。


北 村

 鴨川シーワールドでは本校の学生をほぼ毎年採用してくださっていますね。ありがとうございます。今日は、日本におけるイルカのトレーニングやトレーナーの基本について、教えていただきたいと思います。国内でのイルカショーの始まりですが、江ノ島水族館では、1957年(昭和32年)の開館時に、カマイルカ3頭の能力をショーという形で客に披露したと記録されています。一方、『新飼育ハンドブック』NO5.のトレーニングのページには、1978年に鴨川シーワールドの鳥羽山博士(館長)が、トレーニング理論を確立したと書かれています。この20年の開きは、どういうことなのでしょうか?。

荒 井

 鴨川シーワールドがオープンした1970年当時は、すでに江ノ島水族館など数カ所でイルカショーが実施されていました。鴨川シーワールドは、初代館長の鳥羽山博士の指導のもとでイルカのトレーニングをおこなっていましたが、その頃は、それぞれの園館が独自の方法で飼育をしていたと思います。現在、JAZA(日本動物園水族館協会)には海獣飼育技術者研究会がありますが、その前身は「海獣飼育調教部会」です。第一回会議は1969年に開催され、海獣類のトレーニングやショーに関する議論が交わされました。

北 村

 それぞれの水族館でバラバラだったトレーニング方法を鳥羽山博士が統一なさったのですね。日本の水族館にとって、鳥羽山さんは最も影響力のあった方だと思います。以前、鴨川シーワールドでは、JAZAに加盟する水族館を対象にしたイルカのトレーニング講習会を開催していましたが、今もやっていらっしゃいますか。

荒 井

 現在、JAZA主催の講習会はやっていませんが、海獣技術者研究会の発表演題にはトレーニングに関するものもあります。また、JAZA以外の団体の主催で、トレーニングに関するレクチャーなどがおこなわれることもあります。アメリカにはIMATA(International Marine Animal Trainer’s Association)という組織があり、日本からも多くのトレーナーが会員になっています。IMATAからの情報は貴重なものが多く、最近の技術向上に役だっています。

北 村

 多少問題があるかもしれませんが、イルカのショーは楽しいものですので、水族館からなくならないでほしいと、私は思っています。ところが、2015年のWAZA(世界動物園水族館協会)からの会員資格停止通達は、日本の水族館に大きな影響を及ぼしました。当時、荒井さんはJAZA会長として、大変ご苦労されたのを、知っています。そこで、今後のイルカショーはどうなるのでしょうか。本校にも、毎年数名、イルカのインストラクター希望者が入学してきます。今後の見通しについて教えてください。


(写真7)時事通信HP記事(2015.05.20)から


(写真7)時事通信HP記事(2015.05.20)から


荒 井

 イルカ追い込み漁からの入手に関する議論は、WAZA と JAZA の間で 2003年ごろから始まり、その後も何度かおこなわれてきましたが、明確な結論は出ていません。2014年に WAZA とJAZA の間で正式な討議がおこなわれ、その後の進展が期待されていましたが、2015年に JAZA は WAZA からの一方的な会員資格停止の通達を受けました。WAZA に対してだけではなく、JAZA 内部ですら十分な議論をする時間的余裕もなく、追い込み漁からのイルカ入手を禁止せざるをえなくなってしまったのです。必要に応じて野生個体を導入できるスキームを検討し、WAZA との議論は継続するべきだと思います。同時に、追い込み漁に依存する体質は改めなければならず、飼育下繁殖を推進する努力は続けなければならないと考えます。。

北 村

 最近、イルカの繁殖が数館で成功していますね。鴨川シーワールドでも今まで以上に、繁殖に努力していただきたいと思います。お忙しいところありがとうございました、

注:

JAZA (Japanese association of Zoos and Aquariums 、日本動物園水族館協会)
WAZA (World association of Zoos and Aquariums 、世界動物園水族館協会)


(写真8)荒井氏(右)と私


(写真8)荒井氏(右)と私

荒井一利氏略歴

 東京都生まれ、北海道大学水産学部卒業後、鴨川シーワールド海獣展示課に入り、飼育、調教、パフォーマンスなど、海獣類から魚類まで、水族館の全てに関わる。館長を経て、現在、総支配人。この間、千葉県博物館協会会長、日本動物園水族館協会会長などの公職を務めている。

第10回 おわり